公式予選レポート
早朝、サーキット近辺では雨が降り、午前9時からの公式練習ではウェット宣言が出された。レインタイヤを装着しての走行は行われず、No.100 RAYBRIG HSV-010は伊沢拓也がマークした1'24.958のタイムで4番手につけ、午後からの予選に向けて流れを作った。午後に入り、天気が好転。時折日差しが出て蒸し暑くなるほどだった。そんな中、午後12時30分から1時間にわたり、ノックアウト予選1回目(Q1)がスタート。気温26度、路面温度31度の中、山本尚貴選手がGT300との混走枠で1'24.969のタイムをマークし、2番手の好位置につけた。GT300占有走行を挟み、午後1時20分、GT500占有走行が始まる。No.100 RAYBRIG HSV-010に乗り込んだのは伊沢。ところがアタック直後に車体後方から煙が上がり、スローダウン。2コーナー付近でクルマを止めてしまった。突如としてアタックのチャンスを消失することになったチームだが、山本が混走時に出したタイムが11番手となり、Q2への進出が確定。手塚長孝チーフエンジニアによると、「スロットルトラブルによる失火でプラグが被った」とのこと。薄氷を踏む思いで手にしたチャンスを活かすべく、チームはプラグ交換など懸命に作業を続けた。
Q2は午後3時14分にスタート。10分間のアタックで上位7台を選抜する。インターバルでクルマの修復を終えたチームは、山本をアタッカーとして送り出した。「みんな一生懸命にクルマを直してくれたので、僕はQ3へとつなぐだけでした」という山本の言葉どおり1'24.932のタイムは5番手となり、無事Q3への進出を決めた。バトンを受け取った伊沢。
Q3はわずか8分間のアタックとなる。ラストアタックで1'24.229のタイムをマーク、2番手に浮上したが、最後にNo.12 GT-Rがこのタイムを上回ったため、No.100 RAYRIG HSV-010は予選3位から決勝を迎えることになった。「欲を言えばQ1でカーバランスをフィードバックし、Q2に向けてクルマを作りたかったのですが、(Q1で)トラブルが出てしまって…。でも、Q2でのアタックは落ち着いていけたと思います。神様には見放されてはいなかったんですね。決勝を考えると、先の見える位置だし、ここからだと失うものはなにもないので、前を向いて戦うだけ。だから、今日は喜ばないといけない3位じゃないかなと思います」と安堵の表情を見せた山本に対し、アタックを担当した伊沢は「3番手なんですが…。リアル(No.17 HSV-010)に(ポールポジションを)獲られたのが悔しいですね。(ポールを)狙うための準備をしてきたので、順位としては満足できる順位じゃないです」と無念さをにじませた。
公式予選結果
Po | No | Machine | Tire | WH | Driver | Q1 | Q2 | Q3 |
1 | 17 | KEIHIN HSV-010 | BS | 6 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 1'24.305 | 1'24.781 | 1'24.507 |
2 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | BS | 0 | 松田 次生 | J-P.オリベイラ | 1'24.441 | 1'24.803 | 1'24.950 |
3 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | BS | 0 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 1'24.969 | 1'24.932 | 1'25.229 |
4 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | BS | 16 | A.ロッテラー | 中嶋 一貴 | 1'24.681 | 1'24.737 | 1'25.232 |
5 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | BS | 12 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 1'24.820 | 1'24.969 | 1'25.305 |
6 | 39 | DENSO SARD SC430 | MI | 10 | 石浦 宏明 | 井口 卓人 | 1'23.374 | 1'25.014 | 1'25.351 |
7 | 8 | ARTA HSV-010 | BS | 4 | 武藤 英紀 | 小林 崇志 | 1'24.947 | 1'24.920 | 1'25.383 |
8 | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | BS | 30 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 1'24.941 | 1'25.108 | |
9 | 1 | ウイダー HSV-010 | BS | 0 | 小暮 卓史 | L.デュバル | 1'24.591 | 1'25.130 | |
10 | 46 | S Road MOLA GT-R | MI | 2 | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 1'24.559 | 1'25.291 | |
11 | 24 | ADVAN KONDO GT-R | YH | 8 | 安田 裕信 | B.ビルドハイム | 1'24.925 | 1'25.638 | |
12 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | BS | 40 | 本山 哲 | B.トレルイエ | 1'25.070 | | |
13 | 32 | EPSON HSV-010 | DL | 0 | 道上 龍 | 中山 友貴 | 1'25.078 | | |
14 | 35 | D'STATION KeePer SC430 | BS | 0 | 脇阪 寿一 | A.クート | 1'25.293 | | |
15 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | YH | 22 | 片岡 龍也 | 荒 聖治 | 1'26.521 | | |
決勝レースレポート
天気予報では雨になるといわれていた決勝日。早朝のサーキットはすっぽり雨雲に包まれ、しばらく豪雨となった。これでコースの一部には土砂が流出、安全性が考慮され、午前8時30分からのフリー走行が中止された。この代わりとして、フリー走行直後に予定されたサーキットサファリでは、バスにドライバーが同乗し、コース解説などを行った。また、スタンドで観戦するお客さんには、表彰台からドライバーが挨拶。すでに雨は止んでおり、ファンにとってはサプライズなうれしい出来事となったはずだ。一方、決勝直前のウォームアップは朝のフリー走行中止によって、いつもより長めの時間が用意された。雨のあと風が冷たくなったほか、日差しが出たりにわかに陰ったりと、不安定な状態が続いたが、ドライコンディションで午後2時からの決勝レースを迎えるに至った。その決勝はレース距離が250kmであるため、チームによってはタイヤ無交換の作戦もあるという。表彰台の真ん中を目指し、68周の戦いが幕を開けた。
スタートドライバーは伊沢。トップ2台のNo.17 HSV-010とNo,12 GT-Rが激しく戦う一方、3番手伊沢は思うようにペースが上がらない。次第に2位との差が広がり、さらには後続のNo.36 SC430から猛プッシュを受けることに。それでも伊沢はひたすら前の2台を追うという強い気持ちをもって、後続車との応戦を展開。28周を終えてピットへとクルマを戻した。後ろにいた36号車も同じタイミングでピットイン、コース上以外での戦いも白熱したものに。惜しくも36号車が先にピットを離れ、先行を許したが、追う立場になった山本は俄然ヒートアップ! 慌てず・騒がずの冷静な走りを続け、次第に36号車を追い詰めていった。そして迎えた47周目。アトウッドカーブでイン側のラインを取るや、一気に逆転!クリアなバトルで3位へとポジションアップした。その後は伊沢同様、前の17号車と12号車を追う展開だったが、実は山本が3位への逆転劇を披露する2周前、トップ2台が絡むアクシデントが発生。ペナルティが出された17号車はこのあとピットイン。これにより、No.100 RAYBRIG HSV-010は2位へと浮上する。引き続きプッシュを続ける山本。しかしながらトップ12号車のペースもよく、なかなか2台の差が縮まらない。60周を過ぎて約3秒差にまで詰め寄るも、あと一歩及ばず。結果、2位でチェッカーを受けると同時に、今シーズン初めてのポイントを獲得することに成功した。
決勝レース結果
Po |
No |
Machine |
Tire |
WH |
Driver |
Time |
Best Time |
1 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | BS | 0 | 松田 次生 | J-P.オリベイラ | 1:41'19.273 | 1'26.756 |
2 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | BS | 0 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 0'03.336 | 1'26.568 |
3 | 17 | KEIHIN HSV-010 | BS | 6 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 0'07.677 | 1'26.429 |
4 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | BS | 16 | A.ロッテラー | 中嶋 一貴 | 0'34.813 | 1'27.059 |
5 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | BS | 40 | 本山 哲 | B.トレルイエ | 0'48.063 | 1'27.407 |
6 | 46 | S Road MOLA GT-R | MI | 2 | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 0'50.958 | 1'27.308 |
7 | 1 | ウイダー HSV-010 | BS | 0 | 小暮 卓史 | L.デュバル | 0'52.495 | 1'26.885 |
8 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | BS | 12 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 1'00.306 | 1'27.406 |
9 | 24 | ADVAN KONDO GT-R | YH | 8 | 安田 裕信 | B.ビルドハイム | 1'22.305 | 1'27.452 |
10 | 32 | EPSON HSV-010 | DL | 0 | 道上 龍 | 中山 友貴 | 1'24.166 | 1'27.374 |
11 | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | BS | 30 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 1'25.033 | 1'27.575 |
12 | 8 | ARTA HSV-010 | BS | 4 | 武藤 英紀 | 小林 崇志 | 1'25.257 | 1'27.625 |
13 | 39 | DENSO SARD SC430 | MI | 10 | 石浦 宏明 | 井口 卓人 | 1Lap | 1'27.503 |
14 | 35 | D'STATION KeePer SC430 | BS | 0 | 脇阪 寿一 | A.クート | 1Lap | 1'27.163 |
15 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | YH | 22 | 片岡 龍也 | 荒 聖治 | 2Laps | 1'28.081 |
高橋国光監督
先週は、山本君がフォーミュラ・ニッポンでポールを獲ってるし、チームにとってもいい流れが来ていると思ってました。予選では残念なところもありましたが、レースになればウチは両ドライバーがセッティングの方向性も同じだし、コンビとしてもとてもいいものを持っているので、期待して見ていました。確かに優勝できなかったのはちょっと残念ですが、でも、いい流れで2位になれたのは、トラブルもあったけれど、みんなが一緒になって仕事ができたおかげだと思います。ようやく応援してくださるみなさんに少し感謝の気持ちを届けることができたのかな、と思いますね。予選3位でも満足しなかったからこそ、今日の位置があったんだと思います。でもやはりまず優勝し、それからは何度も優勝できるようなチームにしていきたいですね。今回の色々な出来事は、彼らにとっていいクスリになると思います。
伊沢拓也選手
ちょっとタイヤ的にキツくてペースをうまく上げられなかったですね。スタートしてからはいいと思ったんですが、気温も上がって急にツラくなって。さらにGT300を処理するタイミングも失ってしまい、もっとトップと近い位置で山本選手に交代できればまた違った展開になったかもしれません。でも山本選手も気持ちよく走ってくれましたし、スゴくガンバってくれていたので、僕自身は、落ち着いてあとのレースを見ることができました。今回は、予選で一度傾きそうだった流れを何とかみんなの力で立て直して、今日の結果を掴み取ることができたと思います。そこが去年とまた違うところだし、みんなで成長できているんだと感じるところでもありますね。こういうレースができるということは、シリーズ争いを考えると、強く戦っていけるチームなんだと改めて感じます。次のセパンでは、山本選手にトップでバトンを渡せるよう、ガンバります。
山本尚貴選手
優勝をチームのみなさんにプレゼントしたかったですね。今週末は予選でのトラブルもありましたが、クルマの調子はすごく良かったんです。ただ、決勝でのスタートタイヤが路面とのマッチングが良くなくて、厳しいそうだなと思ってました。でもなんとかポジションのまま戻ってきてくれて…。あと僕ががんばろうと思ってました。36号車にはピットで逆転されましたが、向こうのアウトラップがとても速かったので、やわらかいタイヤを使っているなということがわかったんです。だから焦らずに走りました。去年はセパンで、前のクルマに追いついてから、焦って他車にぶつけた経験があったので、今回はちゃんと成長していることを見せなきゃと思っていました。クルマの調子も良かったからこそ落ち着いていけましたね。その後、自分が2位だと無線で言われ、初めてポジションがわかったんです。目の前に12号車が現われたときには、あのトップを何が何でも抜いてやろうと思いました。差も確実に縮まりましたが、GT300の周回遅れの処理だとか、36号車を速くに抜いていたら、また違った展開になれたかも、という反省点もありますね。みんなでガンバって2位になれたという気持ちが大きいです。優勝できなかったのは悔しいですが、いいレースはできたと思います
手塚長孝オペレーテイングテクニカルディレクター
選択したタイヤがちょっと路面に合わず、そのぶん伊沢は苦労したようですね。そのまま周回を重ねてもしょうがないというか、ピットインして、去年から実績のあるコンパウンドのタイヤに変えて、山本に行ってもらったほうがいいなと思い、当初の予定よりピットインのタイミングを早めました。当初は引っ張れたらもっと行けると最初は思ってたんですが…。結果的に12号車と17号車にどんどん離されてしまいましたね。ピットイン後、(山本)尚貴に代わってからはいいタイムで走ってましたので、「プッシュしろ」と指示したところ、プッシュし始めて、いいペースで走ってくれました。走りも冷静だったし、うまくレースをまとめて走ってくれたと思います。伊沢もツラい中で、ガンバってポジションキープで走ってくれました。次のセパンでは、いいパフォーマンスを見せられる条件が揃ってきたのでは、と思います。去年と同じようなウェイトですが去年はトップ争いができているので、今年は結果を出すべく、ふたりにはリベンジをしてもらいましょう。