公式予選レポート
蒸し暑さと強い日差しが恒例のセパンだが、土曜日の天気はうす曇。湿度も思いのほか低く、過ごしやすい一日となった。とはいえ、午後2時15分からの予選1回目では、気温34度、路面温度44度というセパンらしいコンディションとなる。まずはGT300との混走が行われ、最終調整を続ける中で、No.100 RAYBRIG HSV-010は7番手のタイムをマークした。その後、GT300専有走行を挟んで、午後2時55分から10分間、GT500専有走行がスタート。すでに山本尚貴は予選通過基準タイムをクリアしているため、アタッカーを務める伊沢拓也がステアリングを握り、コースイン。1'58.022のタイムをマークし、7番手で予選1回目を終了した。この後、グリッド決定のための予選2回目を迎えたが、今回はスーパーラップ方式が採用された。予選1回目終了からおよそ2時間のインターバルを経て、上位10台が1台ずつコースイン、アタックを行った。気温31度、路面温度41度と暑さのピークは過ぎたようだが、決勝スタート時に装着するタイヤを使ってのタイムアタックゆえ、路面コンディションとの相性も気になるところ。僅かな変化がタイムに与える影響も少なくないため、時間の許す限りセッティングの見直しを続け、最後のワンラップアタックへと挑むことになった。
予選1回目を7番手の位置でクリアした伊沢。スーパーラップは10位からスタートするため、4番手から出走。リズミカルにコースを攻めて1'57.491をマークした。「朝の走り始めがあまり良くなかったものの、セッションごとにクルマのコンディションが良くなってきたので、いい方向に進んだと思います。スーパーラップは、僕自身うまくいったと思っていたのですが、実はまだまだだった、という感じです」と伊沢は苦笑い。それでも6番手の順位を手にし、決勝は3列目からスタートを切ることになった。「走行後、ロガーをはじめ、いろいろと検証していくと、ツメの甘さが色々ありました。もったいなかったかな、という感じがした予選でしたね」とアタックを終えた伊沢。「でも、決勝に関してはいいものが見つかっています」と力強いコメント。山本も、「持ち込みの状態から徐々にうまくいい方向に進みましたが、その方向に導くためにちょっと時間がかかってしまったかな、という感じです。ただ、3列目からのトップ争いは十分できるし、いいポジションでバトンを受け取ることができたら、結果はついてくるのではないかと思います」と、ふたり揃って、決勝での躍進を誓った
公式予選結果
Po |
No |
Machine |
Tire |
WH |
Driver |
Quarify #1 |
Super Lap |
1 | 1 | ウイダー HSV-010 | BS | 8 | 小暮 卓史 | L.デュバル | 1'57.211 | 1'55.984 |
2 | 46 | S Road MOLA GT-R | MI | 12 | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 1'56.551 | 1'56.371 |
3 | 17 | KEIHIN HSV-010 | BS | 28 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 1'57.781 | 1'56.710 |
4 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | BS | 40 | 松田 次生 | J.P・オリベイラ | 1'57.932 | 1'57.067 |
5 | 39 | DENSO SARD SC430 | MI | 10 | 石浦 宏明 | 井口 卓人 | 1'58.228 | 1'57.239 |
6 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | BS | 30 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 1'58.022 | 1'57.491 |
7 | 8 | ARTA HSV-010 | BS | 4 | 武藤 英紀 | 小林 崇志 | 1'57.952 | 1'57.712 |
8 | 24 | ADVAN KONDO GT-R | YH | 12 | 安田 裕信 | B.ビルドハイム | 1'57.598 | 1'57.749 |
9 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | BS | 18 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 1'58.055 | 1'57.873 |
10 | 35 | D'STATION KeePer SC430 | BS | 0 | 脇阪 寿一 | A.クート | 1'58.313 | 1'57.948 |
11 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | BS | 32 | A.ロッテラー | 中嶋 一貴 | 1'58.472 | |
12 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | BS | 52 | 本山 哲 | B.トレルイエ | 1'58.565 | |
13 | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | BS | 30 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 1'58.570 | |
14 | 32 | EPSON HSV-010 | DL | 2 | 道上 龍 | 中山 友貴 | 1'58.809 | |
15 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | YH | 22 | 片岡 龍也 | 荒 聖治 | 1'58.954 | |
決勝レースレポート
現地の天気予報はつねにシャワー(通り雨)が伝えられていたが、サーキットのインフォメーションボードに貼られていた天気予報は曇り。結果的に雨の心配は無用だったが、それ以上に厳しかったのは例年並みの暑さと湿度が戻ってきたことだった。過ごしやすかった前日の天候とは一転、朝からじりじりとした日差しが顔を出し、重く貼りつくような空気がサーキットを包み込んだ。午前9時40分から30分間行われたフリー走行。このあと、サーキットサファリでも30分の走行を行い、No.100 RAYBRIG HSV-010は2'00.221のタイムで8番手につけた。まぶしいばかりの青い空の下、気温は30度、路面温度は35度からのスタートだったが、僅かな時間に気温33度、路面温度は41度へと達し、決勝はハードな戦いになることを予想させた。決勝レースは46周での戦い。薄い雲に覆われているが、ダミーグリッドはほぼ無風状態。気温34度、路面温度43度の中、各車がフォーメーションラップを終えて正式スタートを切った。接触により上位2台が後退、ポジションアップのチャンスが訪れるも、No.100 RAYBRIG HSV-010は後続車の追撃を許してオープニングラップを6位で終了する。ところが、先行を許したことでラップタイムが遅くなり、いいペースで走ることができない。まるでレーシングスクールの状態と化す中、すぐ後方につけていた伊沢は逆転のチャンスをつかむべく様子を伺いつつ、プッシュを続けた。
レースは6周目。前方の車両にピタリと接近した伊沢は、ここが勝負ポイント、とばかり最終コーナー手前でオーバーテイクに出た。切れよくイン側のラインを挿したのだが、なんとまさかのコースアウト。勢い余ったクルマは先のグラベルベッドにスタック。無事にコースへ復帰できたものの、最後尾までポジションを下げてしまった。幸い、クルマへの大きなダメージはなく、その後ピットにクルマを戻すことなく周回を重ねた伊沢。23周目のドライバー交代までの間、集中力を切らすことなくベストを尽くし、山本へとバトンをつないだ。後半の追い上げを託された山本。「クルマがとても安定していた」とレース後振り返ったように、同時期にピットアウトした8号車をすぐに抜く。コンスタントなラップタイムを刻む一方、オーバーテイクのチャンスが到来すると、無駄のないアプローチで一気に勝負を試みるなど、攻めのレースに終始。メリハリの利いた走りを見せて6号車SC430を逆転する。その周の最終コーナーではペースの上がらない23号車をインから抜き去る。さらにその後、終盤に入ると36号車SC430の姿が目に入った山本は、懸命のプッシュ。一時は0.4秒差にまで詰め寄った。が、周回遅れをパスする間にタイミングを失い、万事休す。7位入賞という結果でセパンの“ホットな”戦いを終えた。
決勝レース結果
Po |
No |
Machine |
Tire |
WH |
Driver |
Time |
1 | 1 | ウイダー HSV-010 | BS | 8 | 小暮 卓史 | L.デュバル | 1h33'34.849 |
2 | 46 | S Road MOLA GT-R | MI | 12 | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 0'14.198 |
3 | 17 | KEIHIN HSV-010 | BS | 28 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 0'32.487 |
4 | 24 | ADVAN KONDO GT-R | YH | 12 | 安田 裕信 | B.ビルドハイム | 1'01.541 |
5 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | BS | 18 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 1'03.887 |
6 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | BS | 32 | A.ロッテラー | 中嶋 一貴 | 1'06.762 |
7 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | BS | 30 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 1'07.242 |
8 | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | BS | 30 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 1'15.427 |
9 | 8 | ARTA HSV-010 | BS | 4 | 武藤 英紀 | 小林 崇志 | 1'23.489 |
10 | 35 | D'STATION KeePer SC430 | BS | 0 | 脇阪 寿一 | A.クート | 1'40.692 |
11 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | YH | 22 | 片岡 龍也 | 荒 聖治 | 1'45.332 |
12 | 32 | EPSON HSV-010 | DL | 2 | 道上 龍 | 中山 友貴 | 1'46.531 |
13 | 39 | DENSO SARD SC430 | MI | 10 | 石浦 宏明 | 井口 卓人 | 1'46.982 |
14 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | BS | 52 | 本山 哲 | B.トレルイエ | 1'59.885 |
15 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | BS | 40 | 松田 次生 | J.P・オリベイラ | 1Lap |
高橋国光監督
伊沢君のコースアウトはやや勢いがありすぎたということでしょうか。GT500を戦うにあたりミスは禁物なので、今回のことは本人もすごく反省していますね。逆転を狙ってのミスだったので、かえって目立ってしまいました。とはいえ、その後はふたりが粘ってしっかりと走ってくれたので、ポイントも獲得できましたし、今後につながるレースができたと思います。シリーズを考えた戦いをしてくれたということです。次のSUGOでは是が非でも結果を出してもらいたいですね。
伊沢拓也選手
前にいた24号車GT-Rのペースが上がらず、早く抜いておきたかったので、インに飛び込みました。ちょっと焦りがありましたね。自分のミスです。今回は、決勝のペースがすごく良かったので、コースアウトでロスしたタイムだけを単純に計算すれば、表彰台には上がれていました。それだけにやはり悔しいです。グラベルからすぐに抜け出せればまた違った展開にもなったとも思いますし。でもあと山本君がガンバってくれてポイントを獲ることができて良かったです。僕たちのクルマはいつも決勝のペースがいいので、これからは予選でもうちょっと前に出られるようにするのが課題ですね。
山本尚貴選手
伊沢さんが難しい状況であることはわかっていました。スピンは抜こうとトライした結果ですし、コース復帰後もペースは落ちなかったので、ドライバー交代したあとは「目の前のドライバーは全員抜いてやる!」と思って走っていました。去年は僕がここでミスをしたので、今回は冷静に、落ち着いてペースを保ち、抜きどころさえしっかりと押さえて走れば、逆転のチャンスがくると思って周回を重ねました。結果、3台パスすることができて良かったです。36号車も抜きたかったのですが、周回遅れのGT300を抜くときにタイヤカスを拾ってしまい、36号車に追いついたあとのペースが上がりませんでした。それは反省すべき点ですね。でも、去年から成長した姿を皆さんに見てもらえたかな、とは思います。今日は一時15位まで落ちましたが、そのあと7位で戻ってポイントも取れたことはシリーズを考えるととても良かったと思います。クルマもまだ軽い状態で次のレースに挑めるので、楽しみです。
手塚長孝オペレーテイングテクニカルディレクター
やはり今回は、最初のコースアウトがすべてですね。結果論ですが、トップは難しいにしても表彰台は見えていたので残念です。ただ(コースアウト後)ピットに戻ることもなく、走行を続けられたことは良かったです。ピットインしたら入賞圏内にも残れなかったでしょう。その後の山本君もガンバってくれました。ドライバー交代のタイミングはほぼ予定どおり。ただ、隣接するチームが上位争いをしていたので、彼らのピットインが終わってから行いました。一方で、スーパーラップでは、タイヤのパフォーマンスをうまく引き出せない状態になってしまいました。決勝用タイヤでアタックし、一発のタイムを出すにあたって、やや決勝用のセットアップというか、タイヤにやさしい状態になっているのだと思います。次のSUGOは去年、予選2位スタートながらスピンして終了、という結果に終わったので、今年こそは表彰台をしっかりと狙いたいですね。