公式予選レポート
朝から青空が上空いっぱいに広がり、時折日差しが顔を出す好天気に恵まれたオートポリス。レース日和といえる恵まれたコンディションの中、Q1のセッションが始まった。気温21度、路面温度29度の下、まずGT300との混走でクルマの状況をチェック。予選通過基準タイムをクリアするためのアタックを山本尚貴が済ませ、GT500占有走行を控える伊沢拓也が最終チェックを行った。迎えた10分間のGT500占有走行。気温、路面温度ともほぼ変動のない中でコースイン。伊沢はやや早目のアタックで1'40.865のタイムをマークする。これが40秒7~8というコンマ1秒の中に4台がひしめくというシビアなタイムアタック競争となり、伊沢は8番手のポジションをゲット。前回は惜しくもスーパーラップ進出のチャンスをつかめなかったが、今回は見事そのリベンジを果たすことになった。
午後3時19分から始まったスーパーラップ。幸い、予選1回目と比較しても、気温および路面温度もさほど変わらず、 No.100 RAYBRIG HSV-010は午前からのいい流れを活かしながらアタックへと突入。アタッカーの伊沢も渾身の一発を披露し、1'40.558をマーク。予選1回目同様、スーパーラップでもごく僅差の戦いが展開され、伊沢のタイムは8番手に落ちついた。「コンマ1秒違ったら、ポジションがもう少し違ったという悔しい思いはあります。しかし、決勝に向けて悪いところはひとつもないので、今日の負けは明日の決勝できちんと取り返したいですね。今までやってきたことが結果につながっているので、決勝では追い上げるだけです」と予選日を振り返った伊沢。一方の山本も「コンマ1秒の中で争えるという状況に戻ってきたこと自体が、今回大きな収穫だったと思います。オートポリスは逆転のチャンスが他のサーキットよりも少ないところですが、楽しんでレースをして、結果を残したい」と意欲を見せた。
公式予選結果
Po |
No |
Machine |
Tire |
WH |
Driver |
Quarify #1 |
Super Lap |
1 | 39 | DENSO SARD SC430 | MI | 29 | 石浦 宏明 | 井口 卓人 | 1'40.486 | 1'39.901 |
2 | 46 | S Road MOLA GT-R | MI | 60 | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 1'39.607 | 1'39.902 |
3 | 17 | KEIHIN HSV-010 | BS | 41 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 1'40.518 | 1'40.419 |
4 | 8 | ARTA HSV-010 | BS | 7 | 武藤 英紀 | 小林 崇志 | 1'41.457 | 1'40.464 |
5 | 35 | D'STATION KeePer SC430 | BS | 7 | 脇阪 寿一 | A.クート | 1'40.715 | 1'40.478 |
6 | 1 | ウイダー HSV-010 | BS | 52 | 小暮 卓史 | L.デュバル | 1'40.527 | 1'40.524 |
7 | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | BS | 28 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 1'40.732 | 1'40.537 |
8 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | BS | 29 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 1'40.865 | 1'40.558 |
9 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | BS | 46 | 松田 次生 | J-P.オリベイラ | 1'40.807 | 1'40.998 |
10 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | BS | 35 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 1'41.867 | 1'41.112 |
11 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | BS | 28 | A.ロッテラー* | 中嶋 一貴 | 1'41.920 | |
12 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | BS | 39 | 本山 哲 | B.トレルイエ* | 1'42.420 | |
13 | 32 | EPSON HSV-010 | DL | 12 | 道上 龍* | 中山 友貴 | 1'42.543 | |
14 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | YH | 14 | 片岡 龍也 | 荒 聖治* | 1'42.975 | |
- | 24 | ADVAN KONDO GT-R | YH | 23 | 安田 裕信* | B.ビルドハイム# | 1'41.460 | |
決勝レースレポート
日曜の朝はうす曇。午前9時20分からのフリー走行を前に、標高の高いオートポリスでは、気温15度、路面温度17度やや肌寒い天気となる。そんな中、No.100 RAYBRIG HSV-010は伊沢がトップタイムとなる1'42.683をマーク。レースウィーク当初から続いていた“いい流れ”をしかとアピールすることで、チームスタッフ一同、決勝に向けての士気を高めることになった。午後2時、54周にわたる戦いの火蓋が切って落とされる。スタートドライバーは伊沢。ポジションキープのままオープニングラップを終え、息つく暇もないような激しい攻防戦を繰り広げていく。アップダウンが多く、抜きどころの少ないオートポリスゆえ、次第にヒヤリとするような場面にも遭遇する。だが、その中で伊沢は落ち着き払った走りを見せ、ときに丁寧に、また時には攻めの姿勢で周回を重ねていった。ところがその一方で、伊沢は次第にペースが落ち始めているのを感じ取っていた。10周を過ぎたあたりからタイヤのフィーリングが芳しくなく、クルマのパフォーマンスをうまく引き出せなくなっていたのだ。チームも伊沢からのインフォーメーションを無線で受け、このあとバトンを受け継ぐ山本が装着するタイヤの変更を迫られることに。さらに、そんな中、伊沢が他車から接触されるというアクシデントが発生。ヘアピンの進入での接触だったこともあり、No.100 RAYBRIG HSV-010は右前のフェンダーを一部破損した。すでにピット作業の準備が整っていたことから、チームは伊沢にピットインを指示。待ち構えたスタッフは、通常のルーティンワークに加え、破損箇所の修復を始めた。
このあと、山本のドライブによって無事にコースへと復帰したNo.100 RAYBRIG HSV-010だが、ピットでの修復に多少の時間を要したこともあり、残念ながら最後尾からレースを再開することになってしまった。交代直後、コンスタントにまずまずのタイムを刻んでいた山本。ところが、前半ドライブを担当した伊沢同様、徐々にペースダウンを強いられ、タイムが伸びなくなる。どうやら今回は、装着したタイヤとレースでのコンディションがうまく噛み合わず、クルマ本来がもつポテンシャルを引き出すことができない状況に置かれてしまった様子。思いもしなかった展開に、改めてレースの難しさ、奥深さを認識することになったのだが、それでも山本は集中力を切らすことなく、置かれた状況を把握し、ベストを尽くす走りに徹する。結局、No.100 RAYBRIG HSV-010は14番手でチェッカードフラッグを受け、セミファイナル戦で厳しい結果を味わうことになったが、最終戦に向けて一層の活躍を誓ったのは言うまでもない。
決勝レース結果
Po |
No |
Machine |
Tire |
WH |
Driver |
Time |
Best Time |
1 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | BS | 39 | 本山 哲 | B.トレルイエ | 1h37'10.996 | 1'44.510 |
2 | 46 | S Road MOLA GT-R | MI | 60 | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 0'08.965 | 1'44.924 |
3 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | BS | 35 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 0'28.614 | 1'44.951 |
4 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | BS | 28 | A.ロッテラー | 中嶋 一貴 | 0'38.318 | 1'44.616 |
5 | 24 | ADVAN KONDO GT-R | YH | 23 | 安田 裕信 | B.ビルドハイム | 0'45.346 | 1'45.052 |
6 | 17 | KEIHIN HSV-010 | BS | 41 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 0'53.038 | 1'43.947 |
7 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | YH | 14 | 片岡 龍也 | 荒 聖治 | 1'18.384 | 1'45.140 |
8 | 32 | EPSON HSV-010 | DL | 12 | 道上 龍 | 中山 友貴 | 1'19.410 | 1'45.269 |
9 | 35 | D'STATION KeePer SC430 | BS | 7 | 脇阪 寿一 | A.クート | 1'37.451 | 1'46.161 |
10 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | BS | 46 | 松田 次生 | J-P.オリベイラ | 1'44.445 | 1'46.624 |
11 | 1 | ウイダー HSV-010 | BS | 52 | 小暮 卓史 | L.デュバル | 1Lap | 1'44.510 |
12 | 8 | ARTA HSV-010 | BS | 7 | 武藤 英紀 | 小林 崇志 | 1Lap | 1'44.213 |
13 | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | BS | 28 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 1Lap | 1'45.029 |
14 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | BS | 29 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 1Lap | 1'44.146 |
15 | 39 | DENSO SARD SC430 | MI | 29 | 石浦 宏明 | 井口 卓人 | 2Laps | 1'42.236 |
高橋国光監督
何が悪いということではなくて、オートポリスの戦いでパッケージとしてのクルマが本来のパフォーマンスをきちんと披露できる状況にならなかった、ということですね。レースウィーク当初から、メンテナンスを担当するM-TECの皆さん、ドライバーのふたりはとても気合が入っていて、ここでしっかりと戦おうという様子が見て取れていただけに、今回の結果は残念で仕方ありません。チーム全員の頑張りに対して大変うれしく思っていたので、この成果が最終戦のもてぎであらわれるといいなと思います。レースではときに思わぬ結果が待ち受けることがあります。最終戦ではいいことがあると信じています。
伊沢拓也選手
スタートから早くも他のクルマとペースが全然違ってしまい、難しい中でのレースになりました。ちゃんとレースがしたかったのに、それができなかったってことです。今回に関しては走り出しの時点で良くなった部分がたくさんあったので、その流れからレースを楽しみにしていました。日曜朝のフリー走行やウォームアップの8分間もすごく良かったので、それを活かしきれず、すごくもったいないと思います。こういう展開は滅多にありませんが、ポジティブに考えると、クルマそのものに関しては今回すごく良くなった部分が多く、予選、スーパーラップでの手応えもあったので、このまま気合を入れて最終戦も頑張ります。
山本尚貴選手
予想だにしない展開になってしまい、悔しいのは悔しいんですが、不思議な感覚です。うまく噛み合わない状況というのはこれまでも似た経験はありましたが、いつもなら走行中になんとかできる対処の仕方もありますし、対処できたんですが、今回に限っては何をやっても症状が改善されずツラかったですね。一方でセットアップやクルマ全般に関しては、手応えや流れはひと通り元に戻すことができたという明るい話題はあります。ポジティブに考えれば、改善された部分、収穫の部分など、決勝に向けての自信はもっています。今回、与えられた環境の中で手を抜くことなく走ったのですが、どうにもならないレースっていうのもあるんでしょうね。そういうときちゃんと無事に帰ってくることも大切だと思いますし、なにか次につながればいいなと思いました。
手塚長孝オペレーテイングテクニカルディレクター
今回のオートポリスに向けて、クルマも相当色々変えて、日曜の朝をいい感じで迎えることができました。レースウィーク始めは、セットアップの方向性や足回りのチェックなど、まずまず順調な流れでいけましたし、正しい方向性にあるということが確認できました。何よりもドライバーふたりが信頼し、安心して走ることができるクルマになったということが大きいと思います。その一方で、決勝ではサーキットとタイヤの相性が悪く、まったくレースを戦うことができずに終わってしまいました。ブレーキングでクルマが安定せず、結果的に攻めることができないという状況になり、ドライバーは辛かったと思います。もう今シーズンは残り1戦になってしまいましたが、改めてもてぎではしっかりと頑張りたいですね。