第5戦 鈴鹿サーキット
公式予選 8月18日(土) | 決勝レース 8月19日(日) |
| |
RAYBRIG HSV-010、手負いのマシンで粘り、11位でチェッカー
予選日の夜遅くから鈴鹿界隈は天候が悪化、長い時間に渡り強い雷雨に見舞われた。その影響で、日曜日は雨こそ降っていなかったが、午前8時から30分間にわたって行われたフリー走行はウエットコンディションでスタート。レインタイヤを装着し、コースインすることとなった。さらに、途中、西コースでは突然の雨に見舞われるなど、極めて不安定な状態。よって、決勝に向けての最終的なセットアップや燃費の確認を行うことができない状況となったが、これは各チーム同じこと。その場のコンディションに見合った最善の戦略で1000kmを走破することが、好成績への近道となる。
フリー走行を終えた伊沢選手は、「路面コンディションが不安定で、ハーフウエットの状態でした。クルマのバランスチェックもできなかったのですが、決勝が1000kmもあるので、代わりにピット作業の練習なども丁寧に行い、準備を進めました。とにかく距離が長いということを味方に粘り強く走ります!」とコメント。近づく決勝に向けて士気を高めている様子だった。例年、1000kmでは日没後にライトオンし、ナイトセッションを経てチェッカードフラッグを受けてきた。だが、今年の復活レースでは午後12時30分にスタートを切り、日没前にレースが終了する予定になっており、暗闇の中を走り抜ける幻想的なクルマの姿は見られない。逆に、暑さがピークを迎える中で、ひたすら周回を重ねるという、より過酷な戦いが待ち受けている。まさにサバイバルレースなのだ。
気温32度、路面温度50度のコンディションの中、ローリングスタートによって1000kmレースが始まる。No.100 RAYBRIGHSV-010は伊沢選手がスタートドライバーを担当、序盤は重い車重をうまくコントロールするため、燃費に気を配り、さらにはタイヤを労りながら周回を重ねることになった。数多くのライバルと競ることも戦いではあるが、レースはまず自分たちのレースをミスなく消化することが問われる。今回の長距離レースはまさにその戦い。ある意味、淡々と周回数を消化し、着実に結果を残していくことが何よりも大事というわけだ。チームも序盤はそのセオリーに基づいてレースを消化、派手なレース展開ではなかったが、粘りある走行で中盤戦を迎えようとしていた。
この時点で、チームはタイヤのマネージメントをより強く意識するようになっていた。34周終了時に最初のルーティンワークを遂行、伊沢選手から山本選手へとドライバー交代し、タイヤ交換と給油を済ませて山本選手がコースへと向かった。レースラップも安定し、順調に周回を重ねていたが、スティント終盤、セーフティカーが入るアクシデントが発生する。リスタート時には、前車をパスし、ポジションアップを果たした山本選手。ところが、急激にタイヤのグリップダウンを感じたため、チームに無線で報告。予定を繰り上げてのピットインとなった。
ルーティンワークを済ませ、伊沢選手が2度目のコースイン。ペースアップし、攻めの走りへと切り替えた伊沢選手は、12号車GT-Rとの攻防戦を繰り広げる。だが、12号車に接触され、あろうことがラジエターにダメージを負ってしまった。すでにクルマは手負いの状態で、ラジエターに穴が開いて中の水が漏れ出しており、水温も上昇。粘り強く走り続け、ポジションアップも見せていた100号車だったが、このアクシデントによって緊急ピットインを強いられた。ガレージに納められたクルマを待ち受けたスタッフが取り囲み、すぐさま作業が始まる。決して短時間では済まない作業であることはみなが承知している。だが、最後の最後までレースは何が起こるかわからない。修復していち早くコースへ送り出そうと、懸命に作業を進めた。
その甲斐あって、100号車は再びコースへと復帰! トップからはすでに20周差と大きく引き離されてしまったが、展開次第によっては、ポイント圏内の10位入賞も夢ではない。2度目のドライブとなった山本選手は上位車両とほとんど変わらぬペースで力走、見えない敵との戦いに挑み続けた。伊沢選手に交代したあとのレースは終盤、午後6時前に2度目のセーフティカーが導入される。130R先、シケインで大きなクラッシュがあり、一時騒然としたが、残り10余周でリスタート。伊沢選手も最後の最後まで諦めることなく攻めの走りに徹し、クラス11位でチェッカードフラッグを受けた。惜しくもあと一歩でポイント獲得を果たせずにレースを終えることになったが、次戦・富士ではランキング争いをするライバルたちとの差はごく僅か。終盤戦に向けてますます激化するシリーズを、いかに乗り切るか。チームの底力に期待して欲しい。
高橋国光監督
今回は大変なレース展開となりました。厳しい戦いの中で、チーム力をうまく発揮できず、残念です。しかしながら、シリーズランキング争いをしているライバルも大なり小なり苦戦していたようですので、後半戦は新たに気持ちを引き締めて、厳しい戦いに挑まなければ、という思いですね。今日は、1000kmという長い戦いだったので、とにかく最後の最後まで諦めずに走って欲しい、という気持ちだけでした。ファンの皆さまには、いいパフォーマンスをお見せできずに申し訳ありませんでしたが、引き続きチャレンジを続けていくので、これからも応援していただきたいと思います。
伊沢拓也選手
理由はどうあれ、12号車との接触でラジエターが壊れてしまい、それまでは粘り強く着実に順位を上げていたのですが、最終的に結果をみたら残念です。チームもチャンスが残っていたので、ラジエターを直してくれて、あの時間の中で、走らせてくれたことにはとても感謝しています。その頑張りに応え切れなかったのが悔しいし、残念です。各チーム、ドライバーともに難しい部分、1000kmだからこそ頑張れた部分もあったのに、それを結果に繋げることができず、やはり悔しい気持ちが大きいですね。確実にポイントが獲れる位置にいたのに、獲れなかった、というのが痛いです。9月のGT富士に向けて、気持ちを切り替え、より混戦になりますが、次でしっかりと取り返したいと思います。
山本尚貴選手
トラブルが出るまでは、クルマのバランス的にはいい状態で走ることができていました。SC後の再スタートでも8号車をオーバーテイクして、ポジションを上げることができたのですが、それ以降、急激にタイヤのグリップがなくなってしまい…。タイヤカスを拾ったと思ったので、2-3周引っ張って走ったんですが、帰ってきてタイヤを見たら、もうタイヤがなくなっている状態でした。あと一周行ってたら、多分タイヤがバーストしていたと思います。終盤、レーシングアクシデントでラジエターに穴が開いてしまい、緊急ピットインとなりましたが、もしかして最後までガンバって走ればポイントが獲れるかもしれない、とみんなガンバって直してくれたことには感謝しています。みんなのために、お客さんのために、そして自分のために、という思いで走ったんですが、あともう少しでポイントが獲れなくて残念でした。一方で、ランキング争いはすごく激戦になってきたので、残り3戦がすごく楽しみになってきました。ハンデウェイトも変わらなくなってきたし、ここからが正に真の力が問われると思うので、改めてチームの団結力を活かしていいレースがしたいと思います。
手塚長孝オペレーテイングテクニカルディレクター
第1、第2両スティントとも淡々といきました。1回目のSC(セーフティカー)ラン直後、フロントタイヤのグリップが急激に落ちたので、予定よりも1周早くピットにいれました。その後もタイヤコンディションは厳しい状態でしたね。ドライブしていた伊沢もバンバン飛ばしてくれたのですが、その走りにうまく対応できず、バイブレーションが出て、結果、ラップタイムも落ちていました。そんなときに12号車との接触がありました。結論からいって、当たられどころが悪かったですね。その前にはタイヤのバイブレーションが出たので緊急ピットインをしようという話にもなっていたし、(ラジエターを)当てられた影響で水も出てしまい、ピットにマシンを戻したんです。エンジンを壊さずに戻れたので、それは良かったと思います。交換作業に時間はかかりましたが、11位で復帰できたので、レース中、何かあればポイント獲れるという思いもありました。しかし、あと一歩ポイントには届かなかったですね。とても厳しいレースになったうえ、思わぬハプニングもあって、結果を残せず残念でした。
決勝レース結果
Po | No | Machine | Driver | Time/Diff. | Laps | Best Lap | Tire | WH |
1 | 1 | S Road REITO MOLA GT-R | 柳田 真孝 | R.クインタレッリ | 5:59'01.662 | 173 | 1'54.795 | MI | 36 |
2 | 35 | KeePer Kraft SC430 | 国本 雄資 | A.カルダレッリ | 15.076 | 173 | 1'55.855 | BS | 12 |
3 | 24 | D'station ADVAN GT-R | 安田 裕信 | B.ビルドハイム | 16.583 | 173 | 1'55.803 | YH | 2 |
4 | 12 | カルソニックIMPUL GT-R | 松田 次生 | J-P.オリベイラ | 17.206 | 173 | 1'56.006 | BS | 26 |
5 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | 本山 哲 | M.クルム | 30.543 | 173 | 1'55.579 | BS | 44 |
6 | 19 | WedsSport ADVAN SC430 | 荒 聖治 | A.クート | 31.549 | 173 | 1'56.640 | YH | 4 |
7 | 8 | ARTA HSV-010 | R.ファーマン | 小林 崇志 | 1Lap | 172 | 1'56.407 | BS | 10 |
8 | 18 | ウイダー HSV-010 | 小暮 卓史 | C.ヴァン・ダム | 1Lap | 172 | 1'55.739 | BS | 60 |
9 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | 立川 祐路 | 平手 晃平 | 3Laps | 170 | 1'55.323 | BS | 88 |
10 | 17 | KEIHIN HSV-010 | 金石 年弘 | 塚越 広大 | 17Laps | 156 | 1'56.147 | BS | 44 |
11 | 100 | RAYBRIG HSV-010 | 伊沢 拓也 | 山本 尚貴 | 20Laps | 153 | 1'55.579 | BS | 76 |
- | 39 | DENSO KOBELCO SC430 | 脇阪 寿一 | 石浦 宏明 | 92Laps | 81 | 1'56.517 | MI | 76 |
- | 6 | ENEOS SUSTINA SC430 | 伊藤 大輔 | 大嶋 和也 | 123Laps | 50 | 1'57.019 | BS | 64 |
- | 32 | EPSON HSV-010 | 道上 龍 | 中山 友貴 | 139Laps | 34 | 1'57.307 | DL | |
- | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | 中嶋 一貴 | L.デュバル | 164Laps | 9 | 1'57.336 | BS | 58 |
天候:曇 | コース:ドライ